宝塚大学

東京メディア芸術学部

教員紹介

桜木 晃彦 教授

教養基礎

桜木 晃彦教授

AKIHIKO SAKURAGI

担当科目

新しい美術解剖学Ⅰ・Ⅱ/ヒトと進化/社会の中の芸術と科学 他

PROFILE

東京大学理学部生物学科人類学課程卒業。博 士(医学)。解剖学者。著 作:『 C Gクリエーターのための 人体解剖学』『自分の 骨のこと知ってますか』 他

-MESSAGE01

「芸術」と「科学」人間を捉える
2つのアプローチの融合を目指して

子どもの頃から「生き物」に興味があり、動物学を学ぼうと大学に入りました。しかし、教養科目として学んだ人類学の面白さが忘れられず進路を「人類学」に変更。骨や歯を研究対象とする自然人類学の研究に取り組みましたが、やはり皮膚、筋肉、内臓などの組織について知らなければ骨のことは分からないと思うようになりました。そこで「解剖学を仕事にしよう」と考えたところ、たまたま日本一の解剖学者の研究室で助手の籍が空き、医学部の解剖学研究室で職を得ることができました。そこで仕事を続けるうち、現在の医学では限界があると感じ、「人間」という生きて動く存在を捉えるためには、これまでの科学とは異なる考え方やアプローチが必要だと考えるようになりました。
その時に注目したのが「対象を直観によって捉える」という美術のものの見方でした。とは言うものの、感覚で表現する芸術の一分野である「美術」と数式で説明する「科学」との間に共通言語がなく、学問的な統合は難しいと思っていました。ところが、芸術と科学という二つの知的作業の溝を埋めてくれる可能性を秘めた技法が出現しました。CG(コンピュータ・グラフィックス)です。そのようなわけで私はメディア芸術の学部に在籍しているのです。

桜木 晃彦 教授

-MESSAGE02

「美術解剖学」も授業を通じ、
自然な人体表現の基本的な知識・スキルを学ぶ

CGの発想を共通言語として、人間を対象に芸術家と科学者がこれまで取り組んできたことを融合することで、新たな学問領域が創造できるのではないかと考えました。私が解剖学の仕事を通じて研究していた「骨の三次元形態」の研究はまさにCGの発想そのものであり、これから自分の力を活かすことができるのはこの分野だと確信しました。
身体構造を表現するにあたり「美術解剖学」という学問分野はすでに存在しました。そしてそれを学生に教えてほしいと宝塚大学から依頼があり、「新しい美術解剖学」「ヒトと進化」「社会の中の芸術と科学」などの授業を通じて、これまで学んできた知識を学生に伝えているという訳です。
骨や筋肉を構造的に分析し再現することで、人体本来の形と動きの特徴が浮かび上がります。その知識を踏まえてマンガ、イラストレーション、アニメーションなどを制作することで「違和感のない自然な表現」が可能になります。「美術解剖学」についての授業は、多少名称が異なるものの美術系の学校であればどこでも行われていますが、他校ではデザイン系の先生が担当していることがほとんどだと思います。私のように大学で医学や人体の構造について学んだ人間が授業を担当しているのは、この大学の大きなメリットだと思います。

-MESSAGE03

超現実を描くためには、
現実を正確に理解していることが必要

「超現実を描けるのは現実を知る者だけ」。これは私が自分の著書のサブタイトルとして記すために考えたキャッチフレーズです。CGを用いたアートなどにおいて「現実を超える」表現の場合、現実と全く無関係な荒唐無稽な内容には、人はあまり魅力を感じません。現実をしっかりと捉えた上で、それを「少し超えた表現」に、私たちはとても魅力を感じるのです。現実を捉えるためには、やはり人体の構造や関節、筋肉の動きを正確に理解している必要があります。そのことを学生に伝えようと授業に取り組んでいますが、誰もが問題意識を持って取り組んでいるので、確実に理解されているようです。
本学は、新宿駅近くという恵まれた環境で、様々な分野で活躍している方々を先生として招き、幅広い知識を学ぶことができます。学生時代にしか経験できないことにどんどんチャレンジして、「美術解剖学」をはじめ、将来の糧となることをたくさん学んでもらいたいと思います。

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