第6回学長×東京メディア芸術学部生 座談会

この企画は、日頃接する機会の少ない学長と直に意見を交わすことのできる機会を設け、
学長が学生の生の声を聞き大学運営に活かすことや、学生に学長を身近に感じてもらいたいという目的で、2020年度よりスタートしたものです。
大阪梅田キャンパスと東京新宿キャンパスを合わせて6回目の今回は、4年次生3名と2年次生1名が参加し、自分の夢や宝塚大学について、学長と語り合いました。
テーマ1「自分の夢」と、「その夢の実現」に対しての、宝塚大学の関わり
- 今日のテーマは『わたしの夢』。自分の夢を語って欲しいと思っています。そして「夢」と「宝塚大学」が、その夢の実現にどう関わってるかということも含めて話をして欲しいと思っています。簡単でいいので、自分の夢を紹介してくれませんか。
- 将来は決めあぐねているんですけど、わたしは今、出版に興味があります。出版に興味を持ったのが宝塚大学に入ってからなのですが、いまは漫画の方に興味があり、校正やチェックなどに興味がります。

- 大学に来てからそういう夢ができたということですね。
- わたしは、今4年次生なんですけど、1年次生の頃に絵を描きたいと思って、2・3年次生の時、やっぱりデザインの方かな、なんて思っていたんですが、やっぱり絵を描いていきたいと思いました。将来的には自分のイラストや、少なくともデザインを通して、自分のグッズ等をつくっていろんな人に知ってもらいたい、自分の作品を知ってもらいたいと思うようになりました。
- わたしの夢は、ざっくりとしか決まってないんですけれど、クリエイティブと教育をかけて何かできないかなと思っています。
- それはどういうこと?例えば。
- 例えば、職業と絡みがあると思うんですけれど、学校の職員になって、そこでクリエイティブな学祭をやったり体育祭をやったり、イベントをやると、クリエイティブ脳が発達して、めちゃくちゃ良い世の中が作れそうだなと思っています。その自己研究などを少しずつ進めています。それもひとつなんですけど、おおまかには自分のやりたいことが尽きない人生を進められたらなと思っています。
- わたしは、ゲーム関係でプロデューサーや、そういったところを目指しています。宝塚大学に入ろうと思ったきっかけですが、高校までは、夢が曖昧でしたが、ゲームが好きだったのでゲームを作れるところで学べれば良いなと思ってここを選びました。大学で学んでいるうち、イベントの委員長をやったり進行管理を任されることとか多くなり、先生からも信用をいただく機会もありました。そんな中で、自分自身、「人をまとめるのが得意なのかな」「やってるの楽しいな」って思ったんで、ゲームのまとめ役、プロデューサーとかそういったところに行こうと今思ってます。
- ゲームというのは一人でやるのではなくて、大勢でやるゲームを前提にしてるわけですか?
- そうですね、基本はみんなで楽しくやれるものと思っています。
- 宝塚大学に入られた理由が、それぞれの皆さんの夢と関わってるかなって思うんですけども、もうひとつ飛んで10年後、あるいは20年後、自分がどうなってるかっていうことを聞かせてもらいたいのですが。
- わたしは、仕事は自分が楽しくできたら良いかなと思っており、あとは生まれ育った家族を支えられていたらな、とは思います。
- わたしは、下の年代の子たちに教えられる立場になってたら、と思います。個展やイベントなどに好きな作品を出せたらなという、まだざっくりなのかもしれないですけど、そう考えてます。好きなことで生計を立てられる状況でいたいなと思っています。
- 今まで、与えられてきてばかりだなと思っていて、たぶんここ2~3年もその状況が多いと思うんですが、10年後20年後、今度は逆に知識ややってきた経験、自分の力がすごくついてきていろんなものが作れるようになったら、他の人に対して夢を与えられたら良いなと思っています。“自分の下の子たち”という表現をしますが、子どもたちとか、20年後になったら今生まれてる子たちが今の自分と同じくらいの歳になると思うので、そういう子たちに良い刺激を与えられるものを作ったり、何か教えたりできればな、と思っています。
- そうですね。<教える>こととか<与える>ことは、クリエイターの仕事と共通するところがあるんでしょうね。だから、人を感動させたいとか自分だけで完結できないよね。楽しい想いをさせてあげたいとか、自分自身も楽しみながらやっていくってことだから。だからもともとそういう志向を持ってらっしゃるのかな、皆さんね。
- 願望といえば願望なんですけど、わたしは、20年後くらい経ってたら、世間的に大ヒットしているゲームソフト1~2本を自分でプロデュースしたり、売っていられればいいかなと思っています。知らない人がいないような作品を作れればいいですね。
- 大学っていろんな意味があって、就職を別に探してくれるところでもないし、ある種文化を伝達してくれるところであるかもしれない。もしくは、自分の全然知らなかった考え方を知れるところかもしれないし、いろんな意味があって良いと思う。
あなた方の夢に対して、大学は影響があるのか無いのかっていうと、直接的には無いのかもしれない。だけど、大学の、例えばサークル活動でも構わないし授業であっても良いし、少し広い目で考えていただいて、大学教育が一体どういう、あなた方の夢に対して意味を持っているのかっていうことを問いたいなと思ってるんですけどね。 - ここの授業は何かを始めるきっかけレベルの授業がすごく多くて、プロフェッショナルなものを学ぶっていうには、授業だけだと不十分なところがあると思います。でも、じゃあこの大学だと何もできないのかと言うとそうではなくて、プロフェッショナル級の先生や環境は実際にあって、機材や先生の経験などもそうですが、そこに自分からアプローチしに行くことができる人であれば向いてるかなと思うし、それを中心に、自分のやりたいことは身についているんです。もちろん、授業がきっかけの知識の部分はそこから始まっていることが多いんですけども、やりたいことは授業の勉強ではなくて実際に何かを作るってことだったので、機材環境や先生方のいる環境に助けられて、自分の力が身についたかな、と思います。
- わたしもね、自分のお師匠さんに教えられたっていう記憶はない。やっぱり、自分で求めないといけないですね。自らアプローチすることによって身につくかなと思っています。だから自分たちの夢を作るのは、先生じゃなくて自発的にやるかどうかによってかなり違うと思う。自ら何かを求めることが、本当は大学生活で身につけることなのかもしれないね、一番ね。
- 確かに授業はきっかけに過ぎないかなというのは同じ意見で、授業内は基礎的なことが多かったので、そこから本当に本人自身がどうやりたいかというのは本人の活動次第なところがあって、先生からきっかけをいただいたりしても、自分が取るか取らないかっていうのはあったので、大学を有意義に使っているかなっていうところですかね。“経験というのはいつか活かせる”と思っているので、きっかけはどんどんもらえます。
- わたしはもともと、芸術のことは何もわからなかったんです。宝塚大学に入ってくる人は、基礎的なことはもう知っていて入学して来ているのに、自分は授業も全然わからなかった。でも、そういう人たちにもひとりひとりサポートしてくれて、他の学生の姿勢や取り組み方とかを見て学び、実際に動かれているクリエイターの先生たちもいたので、「こういうことをしたい時にはこの先生」「この先生に聞けば良い」というのがだんだんわかっていきました。宝塚大学に入学して良かったなっていうのはこういうところです。学生たちがそれぞれ“プロフェッショナルになりたい”と思い、“これはできるけどこれはできない”というところが見えて、では自分は何ができるのか、というところを見つめ直せる4年間だったな、と思いました。
- わたしは、考え方やデザイン、仕事に対しての考え方を学べることに影響を受けています。先生方の授業を通じ、加えて外部の特別講師の方との関わりを通して、仕事に対しての考え方や生き方をいろいろ学べたことは影響を受けてるなと思います。仕事に対して何を大切にするか、といったことは一人ひとり違うので、それがおもしろいと思います。
テーマ2 後輩に対するメッセージ

- もうひとつ聞きたいのは、「こういうことを考えた方が良いんじゃないか」など後輩に対するメッセージがあれば嬉しいなと思います。新しい学生が来た時に、「大学ではこんなことやった方が良いよ」とか「こういう心構えがあった方が良いよ」とかありますか。
- クリエイティブに関係ないことでも好きなことは大事にした方が良いかなと思います。何か好きなことがあることは良いことで、それをクリエイティブに結び付けて、何か作品を作るのにいかせたりもするので、それは大事かなと思います。あと、好きなことを大事にしようっていう単純なことなんですけど、それを知ったというか気づいたのも大学生になってからで。「あ、大事だな」と。
- 言ってみたら大学に入って精神が解放されたのかもしれませんね。高校の時代から考えたら、今まで流れの中に乗ってたものが、少し振り返ってみたら別のものに見えてきたってことがあるかもしれませんね。
- 好きなことも大事だとは思うんですけど、好きなことじゃなくても何にでも、興味のあることに飛び込んでみる。飛び込んだ結果、良いも悪いも経験して、いろんな人と関わって、これが好き、これが好きじゃない、を経験していく事が大切かなと思います。“流される”という意味ではなくて、自分の好きなことを俯瞰して見つけられるようにするため、いろんな人と関わって、流されるんじゃなくて自分に嘘をつかずにものごとを捉える・考える、ということを大切にしてほしいです。いろんな人と関わって、好き・嫌いを見つける。そして頭の中で“なぜ自分が好きなのか、なぜ嫌いなのか”ということを文章化、言葉にして整理をすることができるようになればいいなと思います。
- 例えば自分が好きなこと、あるいは自分の作品をどう語るかっていうのは難しいよね。だからバーバライズ(言語化)する。自分の考えを作品で形にしていくということ以外に、それを言語化していくっていう作業も同時に必要なのかもしれないね。
- 自分が1年次生の時に言われたことがあって、“ひたすら遊べ”と。今思うとやっぱりそれは本当に大事だなと思いました。いまのご時世、例えばコロナウイルスなどもあって、みずから遊びに行きづらい時代になっていて、でも、大学生になると、行動範囲が広くなっていくと思うんですよ。なので自分で考え自ら進んでなにか新しい遊びを考えたりしてみると自分のインプットにもなるし、“考えながら遊ぶ”というのは本当に思い出にもなっていんじゃないかと思っています。このことは、もらったアドバイスですけど、そのまま今の1年次生たちに言いたいなと思います。
- 好きなことはとことんやるのと、後輩には"興味をもったものはやってみたりしたほうが自分のためになるよ"と言ってるんで、ためこまないことですかね。
- ためこまない?
- 我慢とか、こういうことやりたいんだけど無理かなとか、苦手分野だけど興味を持っているものに必要かなっていうことで、「たぶん無理かな」とか「我慢」は正直しないほうが自分のためにもなるし、結局またそこから新たにわかる事があると思うんです。そういう点においても大学は活用できるところだと思っていて、オープンキャンパスの学生スタッフをやったり、先生にやりたいことを言えば手伝ってくれるしアドバイスもくれる。だからなんでもやれるっていうことは伝えているんですけど、とりあえずためこまないで、やりたいこととか嫌いなこととか含めて、全部やって後悔しないようにするっていうことが大事ですかね。そして、さらけ出した方が、仲も深まるし新たな発見もできると思うんですよ。
- 芸術、クリエイターなどがそうなんでしょうけど、つまりね、芸術やものをつくるというのは“自己開示”だよね。“自己開示って恥ずかしいこと”って普通は思う。だから、自己開示できる人間って強いんだと思います。自分の恥ずかしいところを全部さらけ出すみたいなところがあるからね。その中に自分の人間性とか自分の考えが入ってくる。だからそれがものすごく大事だと思います。自己開示できる自分、っていうかね。
最後にもう1つだけ、宝塚大学に来て後悔していますか?していませんか?(笑) - わたしはしてないです。来たくて来たので。
- 最初、大学に入学したときは、後悔じゃないですけど、“うわっ”てなったことはありました。でも、だんだん自分でやりかたを見つけていくうちに払拭されていって、ここでよかったって、ここ1年半ぐらいは感じていました。
- 後悔はないんですが、他の大学だったら自分はどう成長していたんだろうかというのは思います。ただ、いまの自分は好きなので、この大学にこれてよかったなって思っています。
- 後悔はないですね。実際やれなかったこととか、やったことがないことは他の大学でできたのかもしれないんですが、宝塚大学の<学生と先生の距離が近い>という交流関係をつきつめていくと、ここの大学だからこそできた事が多くあったので、そういう意味でここに来て楽しくできたことはよかったです。
- 今日はね、「自分の夢」をきっかけにお話しいただいて、自分の夢や自分の仕事に対してどう向き合うかという事は結構面白い。わたし個人は、なにか面白いことやりたいなっていつも思っています。ただ、やってきたことに対しては、“仕事が嫌だ”“なんかやるの嫌だ”と思ったことがあまりなくて、そういう意味ではたぶんみなさん一緒なんだろうと思います。“なにかやりたいな”ということがまず先に立つので。ポジティブに生きていく、道を探しながら楽しみながら生きてくということはとても面白いと思うし、ここにきている学生たちも非常によく似た感覚をお持ちで、とてもうれしく思いました。
率直にね、みなさんはとてもいい先生に恵まれてると思うよ。いい先生が多いからほんとに。今日はどうもありがとうございました。

米川 英樹 学長
東京メディア芸術学部:学部長 渡邉 哲意 教授(メディアデザイン分野)
<参加学生>
坪井真帆(渡邊ゼミ・2)、板垣正隆(増田ゼミ・2)/田島稜也(渡邊ゼミ・4)/永井一帆(中村ゼミ・4)